騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 任務で向かう事となっている仮面パーティーの会場となるお屋敷は、首都から少し外れたところにある。そのお屋敷の持ち主とは違った人物が主催しているらしい。仮面を付けて身分などは明かさずにただパーティーを楽しむ。それがこのパーティーの趣旨だそうだ。

 そして近衛騎士団員の方に「任務当日の明日は出勤時間にそのままロドリエス団長の執務室に向かってくれ」と一言いただいたはずだった。それなのに……


「テレシアちゃん、起きて!」


 言われた通りいつもの出勤時間に間に合うような時間に起床するはずが、寮母にいきなり叩き起こされプライベート服に着替えさせられた。一体朝からなんだと思っていたら……馬車に乗せられてしまった。

 茶色い馬車に家紋はなく、これがどこの馬車なのかが分からなくて疑ってしまったけれど、寮母は馬車に乗れと言ってきた。だから大丈夫なのかな? と思いつつ乗ったけれど……すでに乗っていた女性、メイド服のようなものを身に着けていらっしゃる方から話を聞けた。


「おはようございます、マーフィス様。ロドリエス侯爵の指示でお迎えに上がりました」


 極秘任務とはいえ馬車の中でのご挨拶となってしまい申し訳ありません、とのことだった。私は近衛騎士団員から近衛騎士団長執務室に向かう事を聞いていたのですが? と、聞きたかったのだが……


「あらまぁ、お顔が少し日焼けなさっていますね。ですがメイクでお隠し出来ると思います。それにしても、ハニーブロンドの髪がとてもお綺麗ですね。騎士の方とお聞きしていますが、簡単に結ってしまうのがとてももったいないですわ」

「……」

「そうねぇ、髪飾りは変更した方がいいかしら。ご用意させていただいたものでお似合いなものがあるといいけれど……」


 ……なるほど、恐らくこれから潜入捜査するためにご令嬢にならないといけないからという準備か。でも、こんな朝から取り掛かるとなるとだいぶ時間が余るような気がするのだが。

 けれど、団長様に派遣団員が意見する事はしないほうがいい。


「……よろしくお願いします」

「えぇ、精一杯、務めさせていただきますね」


 精一杯務める、というところが引っかかったけれど、馬車の中で顔やら手やらを触られてしまいそれどころではなくなってしまった。一体これから何が待っているのかと思っていたけれど、その後到着した大きく豪華なお屋敷に圧倒されてしまい言葉を失った。
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