騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 こんなに人目のあるところで横抱きにされるなんて、普段ならすごく恥ずかしがる場面のはず。だけど今の私にはそんな余裕なんてなかった。

 辿り着いた部屋には、大きなベッドがあった。そしてそこに、降ろされた。けど、私は力いっぱいに待ったをかけた。


「あのっ団……リアムっ!」

「……」


 私に迫ってくる団長様を止めた。上半身を頑張って起こしてから団長様の肩を抑えた。


「あのっ、懐中時計っ!」

「あぁ、あれか」


 止めたはいいものの何と言えばいいのかと戸惑い、あの会場での女性達の話が頭に浮かんだ。そのせいで、無意識にその言葉が出てきた。

 私の部屋に忘れていったのか、わざと置いて行ったのかは分からない。けれど、返さなくてはいけない。


「わ、忘れ物を、お、お返し、したくて……」

「それは君のものだ。返す必要はない」


 えっ、私の? どういう事か聞きたかったけれど、キスをされてしまった。


「知らなかったようだが、さっき聞いただろう」

「っ!?」


 それはきっと、あの会場で女性達が話していた内容の事を言っているのだと思う。相手と同じ瞳の色をした花が描かれた懐中時計を贈る意味。それは……貴方を想っていますという、意味。

 なら、団長様が、私を……?

 一体どういう事なのか聞きたかったところで、この部屋のドアがノックされた。後にしてくれ、と団長様が応えたけれど、近衛騎士の副団長が呼んでいると言われてしまった。


「チッ」


 舌打ちをしていたけれど、またキスをしてきた。がっしりと後頭部を掴まれ、噛みつくようなキスを続けられる。早く行かなきゃいけないのでは、と思ったけれど、中々終わらない。

 ようやく離してもらえた時には、頭が真っ白になっていた。


「話は後にしよう」


 その言葉に、寂しさを覚えた。

 一体私は何を考えているんだ。まだ任務の最中だ。私は役目を終えたとしても、彼はまだ継続中だ。なら早く行ってもらわなければ。けれどそんな彼は……

 私の頬を両手で包み、微笑んだ。


「……――好きだよ、テレシア」


 その言葉は、私の中に響いた。

 団長様から、視線が外せない。さっきまでぎらつかせていたその赤い瞳が、柔らかくなっている事に気が付くと、私の口から何も言葉が出なかった。

 団長様は、軽いキスをしてから部屋を出ていった。

 途端に訪れる、静寂。

 私は、今、何を言われたのだろうか。動かない頭に鞭打ち、そしてようやくその意味を理解すると……まるで一気に加熱するかのように顔が熱くなった。

 つまり……そういう、事?

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