騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

「そう、じゃあ16歳から働いているのね……素晴らしいわ」

「いえ、とんでもない」

「だって、私が16歳の頃はただ遊んでおやつを食べて、その傍ら勉強するだけだったもの。それに比べればとっても立派だわ。これからも頑張ってちょうだいね」

「光栄です」


 こうも言われてしまうと、調子が狂いそうだ。今までこんな方が近くにいなかったし、お相手は隣国の第三王女殿下。下手な事は言えないからだいぶ緊張する。

 それに、本来ならこんな下っ端の団員ではなく使用人か近衛騎士団員が案内するところのはずだ。本当に私でいいのだろうか。

 そんな気持ちで内心心臓バクバクでご案内していた。早く近衛騎士団員かあわよくば団長様が見つかってほしい、という気持ちが大きくなっていく。

 そんな時だった。


「あっ!」


 私達の前方に、廊下をこちらに曲がった方が一人いらっしゃった。私達が探していた、近衛騎士団長ロドリエス侯爵だった。何か資料を持っていらっしゃる彼は、私達を見つける。そして、私の隣にいらっしゃる殿下は、そんな彼に駆け寄った。


「ようやく見つけたわ! ごきげんよう、リアム様!」


 耳を疑った。彼女は今、リアム様と言っただろうか。

 確か、第三王女殿下はこちらに初来日されたはず。近衛騎士団長である団長様は、あちらに来日された事は、確かないと思った。

 もしそうなら、今回の来訪で初めて顔を合わせたという事になる。

 お互い独身の男女二人が、名前で呼び合う。それは、それだけ親しみのある関係であるという事。例えば、家族とか……あと、婚約者とか、恋人とか。
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