聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
「マルティーナは、ルーボンヌでは辛い境遇にあったようなのです。しかし、それというのも神聖魔法の国で自然魔法が使えたからで!」
(マルティーナに非があったわけでは!)
力の入った肩に手のひらが置かれた。
「その辺りの事情なら、留学前にも調べているよ。だからこそ躊躇うことなくアンダルイドに来てもらえたのだし、そのことが我が国で問題になるはずはない」
「それなら、何が問題になるというのですか?」
父親は堪らず噴き出した。
「何も問題にはならないよ。王族の花嫁に求められるただの形式的な調査だ。それとも、不要か? 『絶対に必要になることはない』と言うのであればやめておくが?」
(僕の負けだ……)
勝ち負けなどないはずなのに、そう思えて仕方がない。
ウーゴのときとは違って、父親を相手に好いた女性を白状しなければいけないというのは、気恥ずかしさも覚える。
「……お願いします」
「素直でよろしい」
ご満悦な父親に対し、ルーカスはため息を吐いたのだった。