聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 マルティーナは意を決して教師に相談することにした。
 ようやく勇気を振り絞ったにも拘らず、相談された教師も困惑しきりだった。
 たちまち学校中の知るところとなり、マルティーナは後ろ指をさされるようになった。
 『マルティーナのあの魔法は、邪神の力を借りているらしい』という根も葉もない噂まで流れた。

 マルティーナの魔法が自然魔法であることが判明するのは、それからずいぶんと経ってからのことだった。
 その頃にはすっかり学校では同級生たちから遠巻きにされるようになっていた。
 教師たちからも腫れ物に触るかのように扱われ、家族からも失望されていた。

 ちょうどその頃だろうか。
 マルティーナはしばらく婚約者の顔を見ていないことに、ふと気がついた。
 そのタイミングで婚約者の存在を思い出したのは、学校で孤立し、家族からも口を聞いてもらえなくなり、淋しかったからかもしれない。
 そのときには婚約者の名前を口にするものは、周囲にいなくなくなっていた。
 本人の預かり知らぬところで、マルティーナの婚約話も消えてなくなっていたのだ。
 それはまるで泡沫のようだった──
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