おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
ここは一応、警察の管轄下にあるマンションなんだけど――と思ったところで、あの飛鷹さんだ。きっと何の苦労もなく突破したんだろうな。
もちろん私たちは秒で起き上がり、別々の方を向く。
何事もなく振る舞う私と、膨れっ面の咲人さん――飛鷹さんが「さっきまで何が起こっていたか」を判断するに、充分すぎる材料たち。
「はは~ん、今二人で、」
「ひ、飛鷹さんお久しぶりです!
お元気そうで何よりです!
なにか飲む物を入れてきますね!」
ビュンッと去った私を見て、飛鷹さんは意地悪く笑う。そんな彼をジッと見つめるのは、咲人さん。
「どしたよ大鳳さん。邪魔すんなって文句の一つでも言うかと思いきや、だんまり?」
「いや、そうじゃなくて……」
「??」
煮え切らない咲人さんに、飛鷹さんはハテナを浮かべる。
「わけわかんねぇ」と、飛鷹さんが捨て台詞を吐いて部屋を出ようとした。その時。
「ありがとう、飛鷹」
「――!」
用意するはずだったタバコはないけど。
それでも、咲人さんは伝えた。
「借りを返す」でも「恩を売る」でもなく。
「ありがとう」って言葉を使った。
そして飛鷹さんも――
「ハハ、いいってことよ!」
合図もなく二人は腕を出し、コツンと合わせる。初めての感触に、どちらともなく笑い出した。