大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【銀の針】

さて、その頃であった。

またところ変わって、新宮市中心部(しないちゅうしんぶ)にある警察署にて…

この日、龍介《リュースケ》が処分保留で釈放された。

美羽は、龍介《リュースケ》を連れて警察署から出たあと佐和子《さわこ》の家族たちが暮らしている家に帰宅した。

龍介《リュースケ》は、もといた家に居場所をなくしたので比江島家《ひえじまのいえ》で下宿生活を送ることになった。

時は、夕方5時50分頃であった。

またところ変わって、家の大広間にて…

家の大広間のテーブルの真ん中にイワタニのカセットコンロの上にのっているすき焼きなべが置かれていた。

テーブルのまわりに佐和子《さわこ》智太郎《ともたろう》の夫婦と龍介《リュースケ》の3人がいた。

龍介《リュースケ》は、ものすごくつらい表情で佐和子《さわこ》と智太郎《ともたろう》に言うた。

「あの…ごめいわくをおかけしてもうしわけございませんでした…」

佐和子《さわこ》は、やさしい声で龍介《リュースケ》に言うた。

「いいのよいいのよ…龍介《リュースケ》さんもつらかったよね。」

龍介《リュースケ》は、涙ポロポロ流しながら言うた。

「あの…ぼくはこれからどうすればいいのでしょうか?」

佐和子《さわこ》と智太郎《ともたろう》は、過度にやさしい声で龍介《リュースケ》に言うた。

「龍介《リュースケ》くん、そんなに泣かんでもいいよ〜」
「そうよ大丈夫よ〜」

龍介《リュースケ》は、涙をポロポロ流しながら言うた。

「ぼくは、福津さんに対して…あの時のお礼を述べてないのです〜」

佐和子《さわこ》は、龍介《リュースケ》に対して過度にやさしい声で言うた。

「龍介《リュースケ》さん、比佐志《ひさし》はお仕事の都合で休みが取れないのよ〜」
「それじゃあ、いつになったらお帰りになるのですか?」
「だから、比佐志《ひさし》のお休みの日が決まったら知らせてあげるわよ〜」
「そうだよ…比佐志《ひさし》がお休みを利用して新宮市《こっち》へ帰ってきた時に会えるから大丈夫だよ〜」
「その時に、なんて言えばいいのですか?」
「そんなにむずかしいことじゃないよ…ひとこと『ぼくのために問題を解決してくださってありがとうございました。』と言えばいいだけだよ〜」
「それで誠意は伝わるのでしょうか?」

佐和子《さわこ》は、やさしい声で言うた。

「比佐志《ひさし》はやさしい子だから大丈夫よ〜」
「だけど、ぼくは他にも福津さんに対して多大なメーワクをかけているのですよ!!」

智太郎《ともたろう》は、困った表情で言うた。

「龍介《リュースケ》さんがそう思っているのであれば、比佐志《ひさし》にギフトを送ったらどうかな?」

佐和子《さわこ》は、やさしい声で龍介《リュースケ》に言うた。

「龍介《リュースケ》さんは櫃石島商事《もといたかいしゃ》へ戻ってもう一度がんばるよね。」

佐和子《さわこ》の呼びかけに対して、龍介《リュースケ》はこくんとうなずいた。

智太郎《ともたろう》は、過度にやさしい声で言うた。

「比佐志《ひさし》にギフトを贈りたいのであれば、毎月与えられるお給料の中から毎月1000円を貯金したらどうかな?」
「毎月1000円ずつ貯めた分で比佐志《ひさし》に贈るギフトを買えばいいのよ〜」
「ああ、比佐志《ひさし》が新宮市《こっち》に帰る日が決まったら知らせるから…もう終わりにしよう…お腹すいたからごはんを食べようか〜」
「そうね…そうしましょう〜」

この時、かわいいエプロン姿の美羽《みう》が台所から大広間にやって来た。

美羽《みう》は、やさしい声で龍介《リュースケ》に言うた。

「龍介《リュースケ》さん、きょうは龍介《リュースケ》さんが櫃石島商事《ひついしじま》へフクショクすることが決まったお祝いにすき焼きを作ったのよ〜」

美羽《みう》は、すき焼き鍋のフタをあけたあとやさしい声で言うた。

「きょうは、おとなりさんから松坂牛《しもふり》をたくさんいただいたのよ〜」

智太郎《ともたろう》は、過度にやさしい声で龍介《リュースケ》に言うた。

「龍介《リュースケ》さん、きょうはごはんをたくさん食べて身体を休ませようね…ごはん食べようか〜」

美羽《みう》は、白い小鉢に生卵を割って入れたあと龍介《リュースケ》に差し出した。

この時、智太郎《ともたろう》は心配げな表情で美羽《みう》に言うた。

「比佐人《ひさと》とみわこはどうしたのだ?」
「比佐人《ひさと》さんはきょうは残業…みわこさんはクラス会に行く…と言うてました。」

智太郎《ともたろう》は、ひねた声で言うた。

「あのふたりは、家でごはんを食べるのがそんなにイヤなのか!?」

佐和子《さわこ》は、困った表情で美羽《みう》に言うた。

「美羽《みう》ちゃん、智之《ともゆき》を呼んで。」
「あっ、はい…智之《ともゆき》ちゃん、ごはんよ〜」

美羽《みう》は、となりの部屋にいる智之《ともゆき》を呼びに行った。

龍介《リュースケ》は、ものすごくやりにくい表情ですき焼きを食べていた。
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