初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「片付いていない部屋で悪い」
ダイニングにあるテーブルの上は新聞とノートパソコンが開いたまま。
コンビニで買ってきたであろう白いビニールからは、おにぎりなどが袋から転がり出ている。
慌てて机の上に放り投げたように思えた。
「とりあえずソファーに座りなさい」
常務はソファーにある自分の服を持つと、廊下に向かうドアを開けて出て行った。
私は言われたとおりソファーに座る。
濃い紫色の生地、背もたれもしっかりとしていて備え付けのクッションが気持ちいい。
失礼だとは思いつつ興味本位から周囲を見渡すと、家具はシンプルながらお洒落だ。
ソファーの先にはシアターなのでは?と思うほど大きなテレビが壁についていた。
テレビの横には薄い棚が在るのだが、そこには一切何も無く棚の骨組みだけ。
その棚の近くには引っ越し業者の段ボールが二箱置いてあり、上の開いた段ボールから見えるのは沢山のDVD。
もしかして映画好きなのだろうかと思ったが、そもそもこの部屋にいくつも開け途中や未開封の段ボールがあることに気付いた。
このソファーも新品の香りがする。
もしかしたら引っ越してきたばかりなのだろうか。
しかしそもそもこのマンションに専務が独りで住むには広すぎるのではないだろうか。
どう考えてもこの住居はファミリー向けの間取りに思える。
あぁなるほど、と思ったときに廊下のドアが開く音がして私はそちらに顔を向けた。