初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「もしかしてそれは表向きで、私を心配した、とか?」

言ってしまってなんて自意識過剰なんだと我に返った。
ここまでしてもらったせいか、完全に図に乗っている。
何だか特別扱いされていることでそう思い込んでいる自分が恥ずかしくなり、手を振って誤魔化そうとした。

「いえ、冗談です」
「そうだ」

笑って誤魔化そうとしたのに、森山さんは真面目な顔で答えた。

「君の言ったとおり、さっきのは表向きの話だ。
本当は会社から出るときに君が遅く帰ったと知って、気になって電話を掛けた」

ストレートな答えに私はどうすればいいのかわからない。

「えっと、なんでそこまで心配してくれるんですか?」
「さっきも言っただろう、後悔したくないのだと」
「その、後悔って一体何なんですか?
私には森山さんに何か後悔をさせた記憶は無くて。
あ、もしかしてあの夜に送って貰ったことで何かありました?」

そう言えばあの時既に後悔したくないというような事を言ってなかっただろうか。
森山さんは立ち上がると、

「何が飲みたい?」
「いえ、自分で入れます」
「もう遅いし、麦茶にしようか。
風呂上がりなら冷たくても良いだろう」

森山さんはさっきコンビニで買ってきたペットボトルの麦茶を冷蔵庫から取り出すと、コップに入れる。
そして戻ってきて一つを私に差し出した。
私は礼を言い、森山さんが座ったのを確認して一緒に飲んだ。
そういえばお風呂から上がって喉が渇いていたのを忘れていたため勢いよく飲んでしまうと、すぐに気付いた森山さんがまたキッチンに行きペットボトルの麦茶を私のコップに注いでくれた。
ペットボトルを机に置くと、森山さんはコップを持ったまま少し考えているようだった。

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