あの放課後、先生と初恋。
もちろん部活とのメリハリはキッチリ付けているつもりだし、それは然くんも同じ。
ただ、彼氏と彼女になってからの気持ちの持ちようが今までと比べ物にならないくらい違うから。
じつは不安でいっぱいだったりも……する。
「ふふ。安心した」
「え…?」
「ゼンくんのこと、ちゃんと好きになってるじゃんニーナ」
すこし前、誰もいない帰宅中に初めて手を繋いだ。
わたし以上に照れて、わたし以上に喜んでいる然くんを見たら。
ドキドキしてくすぐったくて、すごくすごく大切にしたいって思ったんだ。
「皆木、私生活でなにかあったか?」
「えっ、なっ、なぜ…?」
合奏を終えてまず、指揮棒を手にした綾部先生はわたしを指名した。
予選が近づき、発表する自由曲はアレンジによって印象がガラリと変わるものを綾部先生は選んだ。
ここからが吹奏楽部の本番になりつつある、7月。