身代わり婚~暴君と呼ばれた辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
13−7 ぎこちない会話
エルウィン達は全員この町の名物料理、ラム肉のシチューを食べていた。
「どうだ? 美味しいか?」
エルウィンは向かい側の席でシチューを口にしているアリアドネに声をかけた。
「はい、とても美味しくて身体が温まります」
するとその言葉に素早くエルウィンは反応した。
「何? ひょっとすると寒かったのか? 俺たちは全員寒さには慣れてはいるが、アリアドネはあまり慣れていないからな……。よし、なら後で馬車に乗せた薪ストーブの薪の量を増やしておくか? ついでにこの町で毛皮の防寒具を買うことにしよう」
「い、いえ。決して寒かったと言ってるわけではありません。ただ、お料理が温かくて身体の中から温まりますという意味で言っただけですから」
アリアドネはエルウィンの過剰な反応に驚き、慌てて弁明した。
「何だ……そういう意味だったのか。てっきり俺はお前が寒い思いをしているのではないかと思った。だが、やはり毛皮の防寒具くらい買っておくか?」
「いえ、もう充分エルウィン様からは素敵なドレスを沢山頂いておりますから、本当にお気遣いしていただかなくても大丈夫ですので」
「そうか……? お前がそこまで言うなら……俺の方は別に構わないが……」
エルウィンは口の中でモゴモゴ言いながら食事を口に運ぶ。
(くっそ~……シュミットにスティーブの奴め。あいつらがアリアドネに親切にしろと言うから、逆に意識し過ぎてしまうじゃないか!)
心の中で2人に対する恨み言を呟きながら食事をするエルウィンを前に、アリアドネの方は不安になってきた。
(どうしましょう……私がお断りしたのでエルウィン様のご機嫌を損ねてしまったのかしら? けれどエルウィン様は私にとって雇用主の様なお方なのだから、これ以上何か買って頂くなんてこと出来ないわ……)
すっかりぎこちない雰囲気で食事をとる2人を周りの騎士達は注目していた。
「一体、お2人はどうしてしまわれたんだ?」
「そうだよな。何故かギスギスした雰囲気が感じられる」
「あ~あ……エルウィン様……眉間にしわが出来てるよ」
「ただでさえ、強面なのになぁ~……」
騎士達はボソボソ話しているつもりだったのだが……。
人一倍耳の良いエルウィンに会話が丸聞こえであると言うことには全く気付いてはいなかった。
(アイツ等……好き勝手な事ばかり言いやがって。精神がたるんでる証拠だ。城に戻ったら山籠もりさせて特訓させてやるからな!)
騎士達の誰もが心の中でエルウィンが物騒なことを考えているとは誰しも思う者はいなかった――
****
「食事は口にあったか?」
エルウィンは食後のコーヒーを飲みながら、アリアドネに尋ねた。
「はい、美味しかったです。ところでエルウィン様は紅茶よりコーヒーがお好きなのですね」
紅茶のカップを手にしたアリアドネの問いに頷くエルウィン。
「そうだな、コーヒーは苦ければ苦い程好ましい。戦場では何日も眠らずに過ごすこともあるし、何より書類を見ていると強い眠気に襲われてしまいそうになるからな」
大真面目に答えるエルウィンがおかしくて、アリアドネはつい笑ってしまった。
「フ……フフッ……」
「な、何だ? 何か今俺はおかしなことを言ったか?」
突然笑ったアリアドネにエルウィンは驚いた。
「い、いえ……。書類を見ていると眠くなると言われたことが少しおかしくて……ミカエル様やウリエル様も勉強をしていると眠たくなってくるとよく仰っていたので。あ! 申し訳ございません! 私……何て失礼なことを……どうぞお許しください」
頭を下げるアリアドネにエルウィンは慌てた。
「よせ、別にそれ位のこと何とも思っていないから顔を上げろ」
「はい……」
顔を上げたアリアドネを見た時、エルウィンは今なら尋ねられる気がした。
「アリアドネ……実は聞きたいことがあるのだが……」
エルウィンは躊躇いがちにアリアドネを見つめた――
「どうだ? 美味しいか?」
エルウィンは向かい側の席でシチューを口にしているアリアドネに声をかけた。
「はい、とても美味しくて身体が温まります」
するとその言葉に素早くエルウィンは反応した。
「何? ひょっとすると寒かったのか? 俺たちは全員寒さには慣れてはいるが、アリアドネはあまり慣れていないからな……。よし、なら後で馬車に乗せた薪ストーブの薪の量を増やしておくか? ついでにこの町で毛皮の防寒具を買うことにしよう」
「い、いえ。決して寒かったと言ってるわけではありません。ただ、お料理が温かくて身体の中から温まりますという意味で言っただけですから」
アリアドネはエルウィンの過剰な反応に驚き、慌てて弁明した。
「何だ……そういう意味だったのか。てっきり俺はお前が寒い思いをしているのではないかと思った。だが、やはり毛皮の防寒具くらい買っておくか?」
「いえ、もう充分エルウィン様からは素敵なドレスを沢山頂いておりますから、本当にお気遣いしていただかなくても大丈夫ですので」
「そうか……? お前がそこまで言うなら……俺の方は別に構わないが……」
エルウィンは口の中でモゴモゴ言いながら食事を口に運ぶ。
(くっそ~……シュミットにスティーブの奴め。あいつらがアリアドネに親切にしろと言うから、逆に意識し過ぎてしまうじゃないか!)
心の中で2人に対する恨み言を呟きながら食事をするエルウィンを前に、アリアドネの方は不安になってきた。
(どうしましょう……私がお断りしたのでエルウィン様のご機嫌を損ねてしまったのかしら? けれどエルウィン様は私にとって雇用主の様なお方なのだから、これ以上何か買って頂くなんてこと出来ないわ……)
すっかりぎこちない雰囲気で食事をとる2人を周りの騎士達は注目していた。
「一体、お2人はどうしてしまわれたんだ?」
「そうだよな。何故かギスギスした雰囲気が感じられる」
「あ~あ……エルウィン様……眉間にしわが出来てるよ」
「ただでさえ、強面なのになぁ~……」
騎士達はボソボソ話しているつもりだったのだが……。
人一倍耳の良いエルウィンに会話が丸聞こえであると言うことには全く気付いてはいなかった。
(アイツ等……好き勝手な事ばかり言いやがって。精神がたるんでる証拠だ。城に戻ったら山籠もりさせて特訓させてやるからな!)
騎士達の誰もが心の中でエルウィンが物騒なことを考えているとは誰しも思う者はいなかった――
****
「食事は口にあったか?」
エルウィンは食後のコーヒーを飲みながら、アリアドネに尋ねた。
「はい、美味しかったです。ところでエルウィン様は紅茶よりコーヒーがお好きなのですね」
紅茶のカップを手にしたアリアドネの問いに頷くエルウィン。
「そうだな、コーヒーは苦ければ苦い程好ましい。戦場では何日も眠らずに過ごすこともあるし、何より書類を見ていると強い眠気に襲われてしまいそうになるからな」
大真面目に答えるエルウィンがおかしくて、アリアドネはつい笑ってしまった。
「フ……フフッ……」
「な、何だ? 何か今俺はおかしなことを言ったか?」
突然笑ったアリアドネにエルウィンは驚いた。
「い、いえ……。書類を見ていると眠くなると言われたことが少しおかしくて……ミカエル様やウリエル様も勉強をしていると眠たくなってくるとよく仰っていたので。あ! 申し訳ございません! 私……何て失礼なことを……どうぞお許しください」
頭を下げるアリアドネにエルウィンは慌てた。
「よせ、別にそれ位のこと何とも思っていないから顔を上げろ」
「はい……」
顔を上げたアリアドネを見た時、エルウィンは今なら尋ねられる気がした。
「アリアドネ……実は聞きたいことがあるのだが……」
エルウィンは躊躇いがちにアリアドネを見つめた――