椎名くんと、恋の駆け引き。
そうしてようやく空き教室には着いたんだけど。
扉を開けようとしたとき、
ガタッと、中から何か物音がした。
もしかして教室の中にだれかいるの?
興味本位で中を覗いてみた。
そしてすぐに後悔する。
覗いてしまった自分を殴りたくなるくらいに。
わたしの視線の先には、教室の奥の方で抱き合う男女がいた。
驚いて、思わずしゃがみこんでしまった。
……え、もしかしてカップル??こんなところで??
ぐるぐると色々なことを考える。
ま、待って。どうしよう。
それより、荷物をしばらく置けないなんて。
一旦ここから立ち去ろうと思って立ち上がったとき、
床に置いていた荷物にぶつかって倒してしまった。
「ひえっ……!?」
ガタッと、大きな音が廊下中にひびいて、血の気が引いた。
急いで荷物をまとめて、逃げようとしたのに、だれかに腕をつかまれてしまった。
振り返ると、見とれてしまいそうなくらい顔の整った男の子がいた。
同じクラスの、椎名 千暁 くん。
あんまり興味がないから知ってることは少ないけど、
モテると噂になっていた男子だ。
整った顔に、パーマのかかったような薄い茶色の髪の毛。
色が薄くて、なぜか色っぽく感じる唇。
スラッとしてて高い身長。ゆるく着こなした制服。
モテる条件だけを集めたみたいな人。
平凡なわたしの顔とは比べ物にならない。
「ねー、君さ、ずっと見てたでしょ?」
「う……」
う…うそ。ずっとバレてたの…???
わたしの反応でわかったのか、イジワルな顔をした。
「やっぱり。せっかく楽しいことしてたのに」
その『楽しいこと』が何を指しているかぐらい、わたしにもわかる。