結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
真臣は、新潟出張から戻ると、「お土産買ってきたよ」と言って、照れながら私のデスクにお菓子を置いていった。
頂いた食べ物を無下にもできず困惑していると、上司から小声で「別れたんじゃないのか?」と確認されたので、「そのはずです」と答えてその手にお菓子を押しつけた。
目ざとい藤原さんがそのやり取りを見逃すはずもなく、どこで裏を取ったのか、その翌日には破談になったことが会社中に広まっていた。
真臣は、何か問われても「僕が悪いんです」としか答えていないらしい。普段からの印象は真臣のほうが良いせいか、一部の社員からは「彼女のわがままで破談になった」と思われているのが腹立たしい。
一番驚いたのは、普段から賑やかなある女性社員が「別れたの? ウケるー!」と言って、陰で笑っていたことだった。元気な楽しい人だと思っていたのに。
何も言わずに差し入れをくれる人もいれば、「戸樫さん、フリーになったの?」と嬉々として食事に誘ってくる酷い人もいた。
週末までずっとその状態だったので、心底疲れた。