恋愛日和    after story omnibus
営業らしからぬホストタイプの見た目
なのに、バンバン仕事は取って来るし、
愛想と話術だけは飛び抜けて目立ってた


きっかけってやっぱり元カレだよね‥


出版社でようやく校正の仕事を1人で
任せてもらえるようになり、泊まりで
働くことなんてザラにある私には、
恋愛との両立が難しかったけど、
1人は嫌だった‥‥


今思えば、相手のことを考えて
あげられなかった1番ダメなタイプだと
思ってる


フラれてもとにかく仕事があったから
がむしゃらにやってた時に、声をかけて
くれたのが孝文だった。


『ねえ、高城さんって他に楽しい事
 何もないの?』


『はっ?どういう意味?』


『そのまんま。あんた綺麗なのに、
 勿体無いなって。俺も仕事は
 好きだけど、今の高城さんは
 真面目過ぎるんだって‥‥』


大したそんなに仲良くもない人に、
いきなり声をかけられて馬鹿にされた。


普段は大人しく仕事していた私が
大声出したのはきっとあれが最初で
最後だと思うほど悔しかったのかな‥



『ンッ‥‥待って‥‥またするの?』


敏感な部分に下を這わせ、そこに
熱が集中していき体がハネる


『ん?だってさっきから違う事
 考えてるからさ‥‥ここ好きだろ?』


『ッッ!!アン!!』


違うことじゃなくて、貴方の事だし‥


あの時、大声を出して怒った私に
また言い返されるかと思ったのに、
優しく抱きしめられた


誰かの腕の中なんて久しぶり過ぎて、
自分の体温以外ってこんなにあったかい
ものなのかなって‥‥



‥そっちの高城さんの方が俺好きだよ。


あんな台詞を耳元で囁かれて、
普通ならハネのけるべきなのに、
どうしてか涙が出たんだっけ‥‥


多分すごくすごく疲れてたんだと思う。


仕事は楽しいのに、楽しめてなかった。
やらないといけないって‥‥


孝文は、きっと壊れかけていた私を
止めてくれたヒーローなんだって‥



『あかね‥‥』


『ん‥‥‥』


押し分けられる熱を受け入れると、
動かないまま見下ろされ、おでこに
唇が触れて、閉じていた瞳を開けて
見つめ返した。


‥‥‥この顔。


見透かしたような生意気な顔が
こんなにも好きになるとは思わなかった


『孝文』


『ん?動いて欲しい?』


『‥‥‥‥ん‥‥そばにいてね。』



ニヤリと笑った彼の額に滲む汗を手で
拭うと、私の手を掴まれ左手の薬指を
口に含むとチクッとするほどの力で
甘噛みされた


『とりあえず予約ってことで‥』


訳わかんない事を言ってると思ったあと
目に映った歯型に思わず吹き出した


『嫌よ、こんな安いの。
 でも‥‥どこにも売ってないから
 消えたらまた付けて?』


END
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