繋いだ手は離さない
第5章
    5
「うーん」


 翌朝、先に起き出したボクが、大きく一つ背伸びをする。


 横には愛理香がいて、スースーという寝息を立てて眠っていた。


 運転席を出たボクは、ゆっくりと近くに設置してある自販機へ向かう。


 二人分のモーニングコーヒーを買うのだ。


 ボクはブラックを一缶買い、愛理香の分には砂糖とミルクが普通の分量入った缶コーヒーを一つ買った。


 たった二百四十円で幸せが買える。


 これは紛れもなくいいことなのだ。


 ボクは冷たい缶コーヒーを二缶持って、車に戻ってくると、すでに愛理香が起きていた。


 彼女は普通の女性より寝起きが悪いので、目を頻(しき)りに擦りながら起き出す。


 車内にはボクの付けていたシトラス系のデオドラントの残り香と、愛理香の付けた甘酸っぱい香水の香りが混じって、漂っている。
 
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