繋いだ手は離さない
第2章
    2
 ボクたち二人はその日、学内に咲いていた桜を見つめながら、すでにネットで科目登録をし終えて、前期の授業が始まるのを待っていた。


 学内にあるカフェテリアからは、外の景色が見える。


 たくさんの桜の木からは、吹きつける南風に任せて花びらが次々に散っていく。


「桜ってすぐ散っちゃうからね」


「ああ。命が短いもんな」


「純平は花好き?」


「うん。まあ、ある程度はね」


 ボクがぼかしたようにして頷くと、愛理香が、


「あたしね、実家が造園業やってるの。だから花に囲まれて育ったわ」


 と言い、笑顔を見せた。


 彼女は小さいときから絶えず花を目にしていたらしく、咲き誇っている美しい花に再び目を向ける。

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