🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
 ピエタ像を思い浮かべながら頭を下げて十字を切ったフローラは、マルテッリ通りを北へ進み、メディチ・リッカルディ宮殿へ辿り着いた。
 コジモ・デ・メディチが15世紀に建てた正方形の館だ。
 その角を西へ向かうと最初のルネサンス建築の一つであるサン・ロレンツォ教会が見えてきて、そこをぐるっと回ると隣接した建造物の入口が現れた。
 メディチ家礼拝堂だ。
 歴代のトスカーナ大公家の墓所である。
 
 入口を抜けると絵画や聖遺物が出迎えてくれ、更に通路を進んでいくと、2階へ続く階段が見える。
 そこを上ったところに君主の礼拝堂がある。
 床には数百種類の豪華な色大理石が敷き詰められ、その先の壁面に墓碑があり、6人の大公が埋葬されている。
 
 フローラは一つ一つの墓碑に頭を垂れて十字を切った。

「フィレンツェを未来永永お守りください。そして、メディチ家の幾久しい繁栄を見守りください」

 しばらく頭を垂れたあと、もう一つの願いを口にした。

「日本が大震災から一刻も早く復旧しますように。原発事故を克服できますように。そして、いつか日本の地を踏むことができますように」 


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