Nightmare of Light.
XII




埋め込まれた飛び石から、玉砂利に落ちてしまったらアウト。

飛び石だけを伝って向こう側の縁側まで到着すればゴール。


いつもこうして私はあなたの帰りを待っていた。



「……………」



石の表面にポタリポタリと染みができる。

そんな涙を拭ってくれる大好きなひとは、もういない。


帰ってこない。

どこかに行ったまま、帰って来なくなった。



「ゆーみ、」



今までも1ヶ月に数回しか屋敷に顔を出さなかったり、帰ってきたと思ったら目的も告げずにすぐ出ていってしまったり。

そんなことは彼の日常茶飯事で慣れたものだった。


だとしても必ず「帰ってきてくれる」という安心がどこかにあったんだ。


それなのに、今は、その安心がまったくない。

もう帰ってこないのだろう───と、なんとなく分かってしまうくらいには。



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