ソウルメイト~男女の親友ってあるの?
4章・ヤマアラシ・ジレンマ
山アラシのカップルに邪魔なモノは、と言えば、あのギザギザした体中の針。
お互い、彼らは近づけば近づくほど、自分達の針でお互いを傷だらけにしてしまう。
でも一緒にいたいのは消せない事実。
そこで山アラシは近づいたり離れたりを繰り返したあげく、お互いを傷つけないですむ、ちょうどよい距離をいずれ見つけだす。

心理的距離が近くなればなるほど、お互いが深刻になるという人間関係のジレンマ、これを《山アラシ・ジレンマ》といって、最初に考案したのは心理学者のショーペンハウアという人だといわれている。
男と女、夫と妻、私とカレ、彼女とボク、性格の違いや、見えない壁は手強いのだけど。
傷つかない、傷つけない恋なんてないのか?。


瀬那と奈緒が離れ、数ヶ月。

奈緒は主人である桜井を最愛の人とし、

二人っきりの生活を満喫させていた。


夏が間近にせまったその日も、

いつも通り都内の職場へと急ぐ桜井を玄関から送り出すと、

太陽に感謝する様に、

カーテンやテーブルクロスを模様変えしては部屋の雰囲気を変え、

大きく育ったパキラへの水やりを楽しんでいる。

そう、

二人っきりの生活―。

桜井と奈緒との間に

コウノトリはやってこないままだった。

奈緒は鉢植えへの水やりが大好きだった。

一日の始まりであり、

どんな気持ちの朝を迎えても、落ち着いて1番に瀬那を思い出せる。

アメリカへの永住転勤の辞令が桜井に出た昨夜、

奈緒は桜井に選択を迫られた。

「奈緒、ついて来てくれるかい?」

奈緒は

桜井についてゆく決心をした。

その為に瀬那に嘘までついたのだ。

桜井の生活が落ち着くまでの妻の務めだと―。

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