1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「困りましたねえ」
首をひねりながらも、山岡はまったく困ってはいなさそうだ。
「あなたが金子さんと結婚してさえくれたら、こんなことにはなっていなかったんですよ」
「私のせい? 金子さんと結婚しなかったせいで、どうなったって言うんですか⁉」
紗彩が追及すると、山岡はやれやれといった顔をする。
「お母さんといい、あなたといい、大人しくしていればいいものを」
「私たちなら騙せるし、扱いやすいとでも思っていたんですか?」
思わず紗彩も大きな声になる。
「父はあなたを信頼していたのに」
「これだからお嬢さまは扱いにくいんだ」
とうとう山岡が本性を現してきたのか、憎々し気に紗彩をにらんでくる。
「山岡さん、今からでも正直に話してください。悪いようには……」
そこまで言いかけたところで、紗彩は激しい痛みを感じた。大きなスパーク音と同時だ。
体中にビリビリとした痺れを感じて、そのままどっと床に倒れ込む。
体の自由がきかないので、頭や手足をガンガンとどこかにぶつけたようだ。
なにが起こったのかわからないし、目もよく見えなくなってくる。
焦る気持ちはあったが、動けないまま紗彩は意識が遠のいていくのを感じていた。