1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
言い訳だとわかっていても、紗彩はそう思うことにした。
来春に式を挙げる予定だった希実からは『なんで紗彩の方が先なのよ!』と文句を言われたが、青年会議所のパーティーがきっかけだと話すと納得してくれた。
相手が消防士の白川結都だと知ると、受付のアルバイトを紹介したのだから『私が縁結びの女神なのね』とますます満足そうだった。
梶谷乳業でも白川ホールディングスの援助が決まった話は大きなニュースとなった。
病床にある母も納得のうえ、山岡を社長代理として新製品発売に向けて準備をしていく。
生産ラインについては田村工場長の努力で効率化し、しばらくは現在のものを利用して凌ぐ予定だ。
そのうえで増産するために、新しい工場を建設することが決まった。
母や希実、梶谷乳業の仲間にうそをついている心苦しさはあったが、それ以上にみんなからの祝福を笑顔で聞くのが辛かった。
会社のための結婚だったはずが、こんなにも周囲を巻き込むことになるなんて想像していなかったことが悔やまれる。
そんな自分の心さえ押し殺していれば、すべてがいい方向にいくはずだと紗彩は信じたかった。
実際に結都との生活が始まると、紗彩はもっと困ったことになった。
結都は洋館の一階にある客間に住んでもらって、紗彩はこれまで通り二階の自室で眠っている。
平常心を保つため、紗彩は毎朝起きるときに呪文を唱えることにした。
(結都さんは、単なる同居人)
これを三回心の中で繰り返してから、ベッドから出るようにしている。
そうしないと赤面しそうな状況が、一日に何度も起こるのだ。