今日は我慢しない。
 距離は近いのに、佐柳は髪以外には触ろうとせず、ただひたすらに私を見つめてくる。


「さ……佐柳……?」

「ん?」

「っ、何がしたいの?」

「…………」



 佐柳はしばらく黙り込んでから、言った。



「キス」


「!?」



 びっくりして、思わず口元を押えた。

 佐柳はふ、と笑う。



「まぁ我慢するけど」



 そう言ってさりげなく私のカバンを取ると肩にかけて私に背を向けた。


「帰ろ」


 なんでもない風にとう言うと、そのまま振り返ることなく歩いていく。


「っ、」


 耳まで熱くなったこの顔で、どうして外を歩けよう。





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