波打ち際で君を想ふ

2

「由奈、古典の宿題やってきた?」

「あっ、待って忘れてた!お願い!写させて!」

「どうしよっかな〜」

「一生のお願い!!」

「しょうがないな〜!」

いつものように他愛のないやり取りをしていると、いつの間にか高校に着いていた。

「由奈先輩おはようございます!あの、今日の練習…」

「おはよ!どうしたの?」

由奈が部活の後輩に声をかけられたので立ち止まる。
そこに

「あ、美波おはよ」

そう言って挨拶をしてきたのはすらっと背の高い男子高校生。

「おはよう、海斗」

中野海斗。
私のクラスメイトで、幼なじみ、そして、私の人生初めての彼氏。

「古典の宿題やった?」

「もちろん」

「まじで?お願い!写させて!」

「え〜由奈が先約だよ?」

「まじか〜!」

海斗はあちゃと言うように空を仰いだ。

「海斗が宿題忘れるの珍しいね、いつもはちゃんとやってくるのに」

「持って帰るの忘れちゃってさ」

「朝から仲良しですな!おふたりとも!」

後輩と話し終わった由奈が私に肩を組む。

「ひぇ〜あつあつ〜」

「もう由奈〜……あ、高橋くんじゃない?」

「えっ!?」

由奈は驚きと喜びの声を上げて、私が指さした方を見た。
私と由奈の視線の先にいたのは、ちょうど自転車で坂を下ってきた男の子、高橋涼太だった。

「おー海斗はよ〜」

「はよ涼太」

「西宮と日野もおはよ」

「おはよ〜高橋くん」

「お、おはよう、高橋…」

さっきまでの元気さが嘘のように由奈は頬を赤くして高橋くんに挨拶した。

「あ日野、古典の宿題やってきた?どーせお前のことだから忘れてそうだけど」

高橋くんはそう言って笑った。

「高橋!うるさい!」

「わーキレんなよー」

いつものが始まった、と私と海斗は顔を合わせて苦笑した。
言い合いをしながら並んで前を歩く由奈と高橋くん。

「もう付き合っちゃえばいいのにね」

「涼太がへたれだからな〜いつも、もし振られたら、とか言ってるし」

「あはは、そんなことありえないのに」

由奈は高橋くんの事が大好きだ。そして、高橋くんと仲の良い海斗が言うには、高橋くんも由奈の事が好きならしい。
もう早く付き合ってしまえばいいのに、と思うけど、いつもあの調子で、まるで夫婦漫才みたいだと思う。
クラスのみんなもなんでまだ付き合ってないの?と思っているらしい。
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