へなちょこリリーの惚れ薬
ある日、木苺を取りに森に入って、迷子になった。
日がとっぷり暮れて、さすがにヤバイかな、と思い始めた頃に、古城にたどり着いた。

夕暮れ時の、オレンジから紫色に染まる空が、森の間から見えた。

「すみませ~ん……。誰かいますか?」

城を囲む、荒れ果てた庭から、灯りが見える方に進む。

「誰かいるのか?」
「キャッ!」

背後から声をかけられ、あたしは飛び上がった。
今、ここに誰もいなかったような!
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