へなちょこリリーの惚れ薬
「雨、止んだね」
「……そう、ですね」


雨が止んだ。
村のすぐ近くまで送ってもらうことになった。
名残惜しいけど、仕方ない。


湖の周りを二人きりで歩く。

鳥の声しか聞こえない。


(世界に私たちしかいないみたい……)


そんなわけないのに。



他愛もない話をしながら、時々、湖のほとりで休憩する。
湖を抜けて森を抜けたら、さよなら。




立ち止まって湖面を見つめた。

帰りたくないよ。


「……どうしたの」
「……」

水面に二人並んで映る。

透き通って消えてしまいそうな銀色の髪が風に揺れた。

「ノア様」
「なんだい」
「また……あの……、会いに来ても、いいですか」
「リリーなら大歓迎だよ」

また次があるって思っていいよね。
向こうから見たら、私なんて、ただの迷子なんだろうけど。

それでもいいや。

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