へなちょこリリーの惚れ薬
「学校は辛い?」
「……はい」
「リリーは言い返したりしないんだろう。そういう子は狙われるんだ。からかいやすいから」

そうかもしれない。
ケンカをするのはイヤだから。
面倒くさい。

人と関わるのが苦痛。


「リリー。辛いなら、別に逃げてもいい。標的が変わるだけだからね」
「……」
「でも、学校には行くんだ」
「どうして……?」

「今は魔法が使えなくても、学ぶことはたくさんあるからさ。キライな奴に嫌味のひとつでも言ってやるとかね」
「ケンカしたくないんです。めんどうだから」
「面倒な、余計なことだけで世界は成り立っているんだよ。でも、それは必要なことなんだ」

「例えば……?」
「例えば、このドレス。リボンもフリルも、何の役にもたたないけど、『カワイイ』から必要なんだろう? 全部に意味があるのさ」


そういうと、ノア様は指をパチン、と鳴らした。

すると、ドレスはいつもの地味なワンピースに戻ってしまった。
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