心が解けていく
見えない高い壁
楽しみな予定はなかなかやって来ないのに、当日になるとバタバタと時間に追われる。
舞台を見に行くのに相応しい格好を考えていたら、開演一時間前。
家から劇場まで、電車で行くから余裕を持って行こうと思っていたのに。
「…何とか間に合った」
電車の遅延もなく、二十分前には着けた。
チケットは取ってくれていて、スタッフさんに言えば通してもらえると言われたけど、どのスタッフさんに言えば良いんだ…。
迷っていると、向こうから声をかけてくれた。
「入られますか?」
「あ、はい。あの…招待を受けまして、」
「もしかして、藤波様でしょうか?」
「はい。そう、です」
「お待ちしておりました。聞いておりますので、お席までご案内いたします」