騙すなら墓場まで
残して明日に回したい欲を吹っ切って食べ切ると、ちょうど正恵さんが番茶を持って食卓に現れた。
「熱いのでお気をつけて」
「いただきます」
腹八分目で少し微睡んでいたところに、熱めの番茶をほんのちょっとずつ胃に流し込む。
「奥様、私ちょっと旦那様に用事ができましたので失礼いたします」
「? ええ」
正恵さんがそそくさとキッチンへと戻り、私はそのまま番茶を楽しむ。慎重に飲み終えると、お風呂の時間はどうするのか尋ねるためキッチンに行こうとした。
「旦那様、かまいませんね?」
思わず隠れてしまった。
そっと覗いてみると、正恵さんが電話で伊月さんと話している。
「あかぎれにはとにかく保湿です。薬用クリームと手袋……ええ、水仕事は絶対にさせません。奥様はお若いんですから、すぐに治りますよ」
私は足音を立てないように食卓へと戻る。本当にどうにかしようとしてくれて、どんな感情を抱けばいいのか全くわからないまま椅子に座った。