騙すなら墓場まで



 正恵さんは自分の胸を叩いた。なんとなくのけ反っているような気もする。


「送ります。お任せください!」


 それからあれよという間に車に詰め込まれ、伊月さんが働く警視庁が眼前に迫っていた。

 服装もシンプルなシャツと細身のパンツで控えめな姿になっている。“お弁当を届けにきた警視正の妻”としておかしくはないと思うけれど、よくわからない。


「すぐ戻ります」


 職場からほど近いパーキングメーターに停めてもらい、そこからそびえ立つ警視庁を眺める。ここまで人通りの多い場所は一年ぶりで、頭の中で受付の人に伝える言葉を繰り返した。


「ご一緒しなくて大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫」

「それではお待ちしております」


 私は車から降りると、正面玄関の自動ドアを通り抜け真っ直ぐ受付へと歩いていった。周囲の騒めきは穏やかなもので、ちょっとだけ想像していた殺伐とした空気は感じられない。


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