あなたと運命の番になる
和真は急いで車に戻る。
時間がなかったのであまり選べなかったが、アイボリーのフレアスカートを買った。かわいい色味とふんわりとした形がピッタリだと思う。

「蘭ちゃんお待たせ!」

和真が車を空けるとそこはもぬけの殻だった。

運転席に1枚のメッセージが書かれた紙が置いてある。

[山城さん
今日はご馳走様でした。
急いで帰らないといけない用事ができました。
直接ご挨拶せず、帰ってしまいすみません。]

どういうことだと思い、蘭に電話をかけるが繋がらない。蘭の家に向かって進む。歩行者の顔を運転席越しに確認するが蘭らしき人は見当たらない。

そこでまたブーブーと電話がなり、和真は慌てて出る。

「今どこにいる??」

和真切羽詰まった様子で聞くと

「あっ俺ですか・・。もう会社着きましたよ。やっぱり今日出勤していただけませんか?」

秘書がかけてきた電話だった。
和真は蘭からではなく、落胆したが、秘書の話を聞く。和真が行かなくてはどうにもならなそうなので、会社に向かうことにする。

秘書からの連絡で少し冷静になり、ふと助手席からいつもの蘭の帰ったあとの香りとの違いを感じる。甘い香水のかおりがした。蘭が香水を付けていたことはない。
店員さん達はもちろん香水なんてつけていない。

和真はハッとする。
あの3人組とすれ違った時、こんな香りがした。
ただあの一瞬で香りがうつるとは考えにくい。
俺が戻った時、蘭は暗かった。コップを割っただけであそこまで落ち込むだろうか。

それにあの3人とすれ違う時、蘭は少し怯えているようで、俺の手を離そうとした。

あいつらか・・・。
和真はイラッとすると同時にあの時、蘭を店内に置いていったことを後悔する。
そして蘭のことが心配になる。

[蘭ちゃん、今日はごめんね。
俺から誘っておいて、嫌な気持ちにさせてしまった。
無事かだけでも知りたいから、一言だけでも連絡がほしい。]

ピコンと音がなり、和真はあわてて、メッセージをひらく。

[ごめんなさい]

たった一言。
完全に距離を置かれてしまった。
蘭に対してはできるだけ慎重にしてたつもりだったが、怖がらせた。
諦められるはずのない想いの持って行き場がわからないが、今からは仕事だと心に言い聞かせた。
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