あなたと運命の番になる

「蘭!!」

蘭は突然声のする方を見る。

そこには少し焦った様子の陽菜がいた。

今日は大学が休みで、朝食を買いにコンビニに出かけたら、蘭の母とすれ違った。

蘭の母が心配そうにしていたので、様子を見に来たのだ。


「大丈夫??辛いよね。」

うずくまる蘭の背中をさする。

陽菜はβであり、さほど匂いは分からないが、今日はいつもより濃い気がした。
それに蘭があまりにもしんどそうで見ていて辛くなる。

扇風機を弱から強にして蘭の方に向ける。

「陽菜・・・ごめんね。迷惑・・かけて。」

背中をさすってもらい呼吸が整ってくる。
陽菜がいると寂しさや虚しさがましになる。

「蘭、気にしなくていいから。
無理して話さなくていいよ。
あついよね。保冷剤取ってくるね。」

陽菜は蘭が少し落ち着いたので、保冷剤を取りに行く。
冷やして熱を抑えると体が少し楽になる。

保冷剤で体を冷ましたり、背中をさすったりを1時間ほどしてもらうと蘭の体はだいぶ楽になった。

「陽菜、ありがとう。ごめんね。
でももう大丈夫だから。」

蘭は笑顔をつくり、言う。

「全然いいって。いつも頼ってって言ってるじゃん!」

蘭の表情は全く大丈夫ではない。
顔は疲れきっており、無理して笑ってるのがバレバレだ。
蘭はとても優しくて気を使える人だ。昔からそうだが、Ωと分かってからは特に周りをみている。そしてあまり自分の意見を言わなくなってしまった。
友達としてもっと頼ってほしいし、甘えて欲しいと思う。

「蘭、お昼ご飯食べれそう?朝もまだ食べてないよね。」

伏し目がちに首を振る。
蘭はヒート中は食欲がなくなってしまってほとんど食べられない。
高校時代はヒートやストレスで15キロほど痩せてしまった。もともと細めの体型だったので、誰が見ても心配になる感じだった。
今は少し増えたが、相変わらず痩せている。
ヒートになるといつも3-4キロは痩せる。ヒートの疲れと栄養不足でヒートが終わっても体が本調子に戻るのに時間がかかるのだ。

「そうだよね。今は無理しなくて大丈夫だから。
でも少し水分はとった方がいいよ。
脱水になっちゃう。」

買ってきたスポーツ飲料を空けて、蘭に渡す。

「ありがとう。」

たくさん飲むと吐き気がしてしまうので、少しだけ飲む。爽やかな甘みが口に広がった。
< 38 / 173 >

この作品をシェア

pagetop