あなたと運命の番になる
「蘭!!」
蘭は突然声のする方を見る。
そこには少し焦った様子の陽菜がいた。
今日は大学が休みで、朝食を買いにコンビニに出かけたら、蘭の母とすれ違った。
蘭の母が心配そうにしていたので、様子を見に来たのだ。
「大丈夫??辛いよね。」
うずくまる蘭の背中をさする。
陽菜はβであり、さほど匂いは分からないが、今日はいつもより濃い気がした。
それに蘭があまりにもしんどそうで見ていて辛くなる。
扇風機を弱から強にして蘭の方に向ける。
「陽菜・・・ごめんね。迷惑・・かけて。」
背中をさすってもらい呼吸が整ってくる。
陽菜がいると寂しさや虚しさがましになる。
「蘭、気にしなくていいから。
無理して話さなくていいよ。
あついよね。保冷剤取ってくるね。」
陽菜は蘭が少し落ち着いたので、保冷剤を取りに行く。
冷やして熱を抑えると体が少し楽になる。
保冷剤で体を冷ましたり、背中をさすったりを1時間ほどしてもらうと蘭の体はだいぶ楽になった。
「陽菜、ありがとう。ごめんね。
でももう大丈夫だから。」
蘭は笑顔をつくり、言う。
「全然いいって。いつも頼ってって言ってるじゃん!」
蘭の表情は全く大丈夫ではない。
顔は疲れきっており、無理して笑ってるのがバレバレだ。
蘭はとても優しくて気を使える人だ。昔からそうだが、Ωと分かってからは特に周りをみている。そしてあまり自分の意見を言わなくなってしまった。
友達としてもっと頼ってほしいし、甘えて欲しいと思う。
「蘭、お昼ご飯食べれそう?朝もまだ食べてないよね。」
伏し目がちに首を振る。
蘭はヒート中は食欲がなくなってしまってほとんど食べられない。
高校時代はヒートやストレスで15キロほど痩せてしまった。もともと細めの体型だったので、誰が見ても心配になる感じだった。
今は少し増えたが、相変わらず痩せている。
ヒートになるといつも3-4キロは痩せる。ヒートの疲れと栄養不足でヒートが終わっても体が本調子に戻るのに時間がかかるのだ。
「そうだよね。今は無理しなくて大丈夫だから。
でも少し水分はとった方がいいよ。
脱水になっちゃう。」
買ってきたスポーツ飲料を空けて、蘭に渡す。
「ありがとう。」
たくさん飲むと吐き気がしてしまうので、少しだけ飲む。爽やかな甘みが口に広がった。