黒い糸
 黒い糸が、私に絡みついているらしい。

 いつからだったのかは分からない。
 気がついたらその黒い糸は私の体のあちこちにあると、みんなが言う。

 絡みつかれている私だけが気付いていない。

 いくら外そうとしても私には見えないので外すことができない。
 友達にやってもらったけれど、ハサミでも切れないらしい。

『私はそれ、やりたくない。やっても仕方ないから』

『私はこれで良い。そんなの必要ないよ』

 私がよく口にする言葉。
 言うたびに糸は何重にもなって絡みついてくる。

 変な先入観を持っていて、変な執着の仕方をしていると、私はみんなからよくそう言われている。
 でも、周囲に“染まる”のは嫌。

 私がそんな言葉を言うたび、そう思うたびに黒い糸は増えているという。

 私は知らないうちに動けなくなっていく。
 私からは見えず外れない、絡みつく糸はもう何重にもなったのだろう。

(もういいや、このままで……)

 そう思ったところで私は倒れ、全く動けなくなった。
 私の意識も途切れた。


 黒は何にも染まらない。
 白くまっさらな気持ちで自分にしっかり向き合わなければ、その糸は外れることはない。
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