『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 翌日、フィレンツェに到着した男はホテルに荷物を預けて、ミケランジェロ広場に急いだ。
 アルノ川を渡った小高い丘にある広場からの眺めは最高だった。
 風薫る5月、爽やかな風が川面から吹き上げて、彼女の頬を撫でていた。
 
 花の都が一望できるだろう。ナイチンゲールが生まれた町だよ。ルネサンスが始まった町だよ。

 写真の彼女に語りかけた。

 川の反対側にあるのがウフィツィ美術館で、その後ろがヴェッキオ宮殿。そして、更に後ろにあるのが花の聖母教会だよ。

 彼女が頷くのを見て、男は西の方を向いて大きな建物を指差した。

 あそこがピッティ宮殿だよ。あの中にあるパラティーナ美術館に君の大好きな絵が飾ってあるんだよ。

 すると、彼女のねだるような声が聞こえた。

 早く見てみたいわ。

 わかった、すぐに行くからね。

< 183 / 269 >

この作品をシェア

pagetop