『後姿のピアニスト』 ~辛くて、切なくて、 でも、明日への希望に満ちていた~ 【新編集版】
 その夜遅く、ドアを叩く音で目が覚めました。
 飛び起きて覗き穴を見ると、男性が立っていました。
 その人は「電報です」と言いました。
 
 医師からでした。
 なんだろうと思って恐る恐る文面を見ると、母の死亡通知でした。
 
 信じられませんでした。
 母は今日ここに来たのです。
 卒業証書と現金とメモを置いていったのです。
 ウソでしょ? 
 そんなことあり得ない!
 わたしは首を振りながら台所の床にへたり込んで、焦点の合わない目で文面を追い続けました。
 
 連絡が欲しいと書いてありました。
 電話番号が記されていました。
 急いで着替えて、あるだけの硬貨をポケットに入れて、自転車に飛び乗りました。

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