クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
「何かあった?」


「え?」


「考えごとしてたみたいだったから」


「あの……」


「どうぞ」


「え?」


「話、聞くから」


「えっ、あの、ちょっと」


まただ。
体が勝手に拓弥さんの部屋の中に吸い込まれていく。
こんなこと、本当に良いのだろうか?
だけど、頭ではそう思っても、私の体はこの部屋から逃げ出すことはしなかった。


「座って。温かいミルクティー淹れるから」


「えっ、そんな……」


「気にしなくていいよ。ラクにして」


「す、すみません……」


拓弥さんは、テーブルのイスを引いて紳士的に私を座らせてくれた。


辺りを見回して改めて当たり前のことに気づいた。
ここが自分の部屋ではないことに――


この何ともいえない緊張感は、初めての時と何ら変わりはなかった。


「はい。どうぞ」


漂う甘い香りにホッとする。
拓弥さんが淹れてくれたミルクティーが飲めるなんて、贅沢で幸せ過ぎる。
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