婚約者候補は辞退させてくださいませっ!
ニコライ様が、ご自分に対する噂を気にされているのでしたら、悪女と噂されている私はどうなりますの?

私の噂をご存知でしょう?

ふふふ、ニコライ様、実は今回神殿へ滞在することを決めたのは、とても浅はかな考えでしたの。


ある方に人並みになれ、と言われまして、自分の噂を払拭しようとこちらに参りましたの。   

ニコライ様は、私のことを噂と違うと言ってくださいましたわ。 私自身を見てくださり、耳を傾けてくださいましたわ。


ここでの経験は、私にとって初めてのことばかりで、とても充実しております。

それは、ニコライ様のおかげですわ。

ニコライ様には、感謝しかありません。
お優しい方です。


ニコライ様がもし、誰かに何か言われたとしたら、私が黙っておりませんわ!

こんな、私では、頼りないでしょうけれど……」

って、私ったら、勢いよくとんでもない発言を……。

思わず手を包むように握ってしまったけれど、
ど、ど、どうしたらいいのでしょう?

い、い、いつ離せばいいのでしょう、

何かおっしゃってくださいニコライ様。

ニコライ様は、ただ黙って静かに座っていた。

ドク ドク ドク と自分の心臓の音が聞こえる。  

手を、手を、離しましょう。

マリーベルは、添えていた手を離そうと動かす。


「⁉︎」

すると、マリーベルの手を今度はニコライが握りしめる。


その手の温もりが、嫌ではなかった。



私達は、目を見合わせると、手を繋いだまま、軽く微笑み合う。

「マリーベル様、あなたにお話しして、なんだか気分がすっきりしました。

これで、心置きなく自分の信念を貫けそうです。」

ニコライ様は先程とは違い、とても晴れやかな表情をしていた。

「マリーベル様。私も、あなたが誰かに悩まされるようなことがありましたら、黙っておりません。 例え相手が誰であろうとも。
私が、必ず、あなたを必ずお守りいたします。」


私に真摯に向き合ってくださるニコライ様。

真っ直ぐに見つめてくるその瞳には、とても温かい感情がこもっていた。

その瞳に見つめられると、落ち着かなくなる。

胸がこんなにざわつくのはどうして?

ニコライ様の瞳の中に、自分の姿が写っている。

たったそれだけのことなのに、なんだか嬉しくなる。このままずっと、私を見ていてほしい。

この気持ちは、何なのかしら。

「さぁ、難しい話はこれぐらいにして、ミシェルの元へ行きましょう。
ミシェルも、そろそろ文句を言いはじめる頃でしょう。」

ニコライとマリーベルは、手を繋いだまま立ち上がる。

そうして、手を繋いだまま一緒に歩きだした。

< 36 / 60 >

この作品をシェア

pagetop