nonsense magic
7 虚な体温
☽꙳
「……ただいま、」
返ってくる声はない。
……出かけてる?
ふわ、と頬を撫でた冷風に、耳にかけていた髪が落ちてくる。ゆるりとカールを描く触覚を耳にかけると、首裏に張り付いた後毛を指で避けて、靴を脱ぐ。
久しぶりにヒールを履いたからか、脱いだ瞬間の脱力感がものすごくて、……なにも身に付けていない、身軽な足元がとても安心する。
……はやく、お風呂入りたいな。
「、……!」
そろり、そろり、意味のない忍足でフローリングの床を滑って、ドアの隙間から部屋の中をちらっと覗いてみる────……と。
「きりくん、いますか……?」
物音ひとつしない部屋はガランとしていて、人の気配もしない。返事もないし、きりくん外出中かな、と、自分のなかでひとつの結論を出すと、一気に身体の力が抜ける。
ずっと力んでいた心臓がふにゃりと緩んで、ゆるやかな鼓動を刻み出す。思わずほっと息をついたのと同時、────……ゆっくりと視界が後ろに傾いて。
「っ、!……ぇっ、」
ぎゅっと、やわらかな熱に包まれる。