第一幕、御三家の桜姫

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「注文もお姉ちゃんにしていいの?」

「あ、うん、いいよ」

「ウサギさんのお菓子がいいな」


 傍に立てかけてある看板には和菓子の種類がある。季節の和菓子と、ウサギの和菓子と、定番の三種類。「じゃあ季節の和菓子お願いします」「あ、それをもう一つ」と言われて、近くにいた岡本さんから慌てて借りたメモに書き連ねる。


「かしこまりました。じゃあ優実、楽しんでね」

「うん、ありがと!」


 じゃあねー、と優実は手を振ってくれる。注文を書いたメモを一枚千切って岡本さんに返すと、びっくりした表情で私と優実を交互に見た。


「妹?」

「うん。目が似てるねってよく言われるよ」

「……あー、確かに! 眼鏡だとあんまり分からないけど似てるね」


 じっと私の目を覗き込み、岡本さんは頷いた。そう、三人兄妹で目がそっくりだ。


「雰囲気全然違うからちょっとびっくりしたけど、隣に並んでるとぽいよね」

「まぁ、うん。あんまりパッと見た感じじゃ分からないかもなぁ」


 そう話して、桐椰くんと彼方の組み合わせを思い出す。別々に見たらあの二人が兄弟だなんて誰も思わない、と月影くんも言っていた。いくら血が繋がっているとはいえ、兄弟の〝似てる〟なんてその程度だ。彼方が豪快で女好きなのに、桐椰くんは一見社交性がなくて女々しい女子を好まない。同じように、私はこんなだけど、優実は快活で感情の起伏もはっきりしてる。そして、私と違って、その名前の通りとっても優しい――。


「あ、そうだ。私の妹の組、私が払うからお金取らないであげて」

「え? あ、うん、そういうことなら伝えとく……」

「シフトが終わるときに払うから」


 よろしくね、と伝えて、また一組立った後の席に向かって後片付けをする。生徒会に目をつけられる前だけ少し話していた岡本さんは、どうやら今は普通に話してくれるようだ。これが御三家パワー。本日のBCCは私の立ち位置にどんな影響を与えるんだろう。

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