拝啓、前世の恋人へ。恋知らずな君を千年分の愛で離さない
 隣からそっと手を握られる。

「やっとあの夜の続きだな」

 艶めいた声に体温がじわりと上がった。これから訪れる甘やかな時間を期待するかのごとく、心臓がコートの下で飛び跳ねはじめる。胸がはちきれそうなほどの幸福感に、我知らずため息をもらしたら、彼が私の耳に顔を寄せてきた。

「たとえ神様だろうと二度と引き離せないよう、ふたりで固い契りを結ぼうか」

 かっと顔が熱くなる。つないだ手を、指をからめるようにして手を握り直された。
 彼が肩を揺らして笑う気配に、顔を上げなくてもからかわれているのだとわかる。

 一矢報いる――とまではいかなくとも、いつまでも受け身では彼の妻は務まらないと気づいたばかりだ。

「わ……たしも、がんばります」

 思い切って手をぎゅっと握り返してみた。――が、なんの反応もない。
 見当違いなことを言ってしまったのかと冷や汗が吹き出して、「あのっ」と慌てて顔を上げる。瞬間、唇に温かなものが触れた。

「……っ」
「そんなにかわいく煽ったら、どうなっても知らないよ」

 脅すような言葉とは裏腹に、困ったように眉を下げた彼が甘く見つめてくる。胸がきゅんと高鳴って、無言でうなずいた。

「……は今度に……ようかな」
「え?」

 ぼそっとつぶやかれた言葉が聞き取りづらくて振り仰ぐと、彼は大きな息を吐いてから再び歩きだした。

 駐車場に止めた車を目指す彼の足取りが、心なしか速くなる。つないだ手とほてった頬を、春風がひと撫でしていった。



 おわり 
< 177 / 177 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:145

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
神託により稀代の神聖力を持つオディリアは 黒皇帝と恐れられる新皇帝ルナルドに嫁いだ 結婚式を終えたその夜 いよいよルナルドと顔を合わせたオディリアだったが―― 「誘っているのか」 「不幸になりたくなければ俺に関わるな」 「大聖女様はかなりの悪女だ」 ・゚♡★♡゚・*:.。 。.:*・゚♡★♡゚・*:.。 。.:*・゚♡★♡゚ オディリア・ブルーム(19) 神託により皇帝に嫁いだ大聖女 孤児だったが稀代の神聖力で教皇の養女となる × ルナルド・ヴィーザー(25) ヴィーザー帝国の皇帝 隣国との戦争に勝利を導き、軍神と呼ばれる ・゚♡★♡゚・*:.。 。.:*・゚♡★♡゚・*:.。 。.:*・゚♡★♡゚ 「淑女の体を勝手に暴くのは紳士のすることではありません!」 「俺は彼女の夫だぞ」 ――陛下、私と一緒に幸せになってくださいませ 大聖女は小さくなっても大奮闘です!
ひとりでママになると決めたのに、一途な外交官の極上愛には敵わない
  • 書籍化作品
[原題]エリート外交官の極上執愛~再会したら(秘密のベビーともども)蕩ける愛に包まれました~

総文字数/75,266

恋愛(純愛)93ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
三年前、付き合っていた彼からプロポーズされた私は 言葉にできないくらいの幸福を噛みしめながら 初めての甘い夜に溺れた。 どんなときもそばにいて支え合って 世界一幸せな家族になる。 そう誓ったはずのに――。 ****** 柚原 さやか(ゆずはら さやか)26歳 1歳10ヵ月の息子を育てるシングルマザー      × 結城 櫂人(ゆうき かいと)33歳 元恋人で優秀な外交官 ****** 「さやかは俺の大事な人だ」 「愛しすぎて我慢できなくなるだろ?」 「きみが笑っていてくれればそれでいい」 これがあの日の続きならいいのに。 ୨୧┈┈Special Thanks┈┈୨୧ sadsukgc様 チャマ様 レビューありがとうございます! ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲ ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり 実在のものとは関係ありません。 ※他サイトでも連載中。 ※無断転載禁止。 20230321 Start
愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
  • 書籍化作品
[原題]無垢な花嫁は強引ホテル王にどこまでも甘く奪われる―極上愛育婚―

総文字数/136,664

恋愛(純愛)225ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
✨マカロン文庫にて書籍配信中✨ ♡゚.。.:*・゚♡★♡゚・*:.。 。.:*・゚♡★♡゚ 白無垢を身に纏い、 晴れやかにしつらえた部屋で一人 わたしは震える手を握りしめていた。 この婚礼は、傾きかけた実家の料亭を救うため。 相手は昔から苦手な男 (覚悟を決めたから戻ってきたんでしょう、 寿々那……) そう自分に言い聞かせても 震えは一向に収まらない。 せめてもの救いは、 わたしの「初めて」が この男のものではないこと。 ロンドンの最後の夜に、 自分が選んだ相手に捧げてきたのだから。 あの夜の思い出さえあれば、 これから幾度も続くだろう 苦痛の夜にも耐えられる。 そう思っていたのに――― ****** 森 寿々那(もり すずな)25歳 老舗料亭【森乃や】の長女 実家料亭の危機を救うため 苦手な相手との結婚を受け入れ ロンドンから帰国した   × 香月 祥(かつき しょう)34歳 寿々那がロンドンの最後の夜に出逢った男性 実は大ホテルチェーン【香月リゾート】の社長 若きホテル王 ****** 『出来る限り優しくしよう』 『ひどくしてください。優しくなんて…しないで』 『わたしの初めてを……手ひどく奪ってくださいっ』 『覚悟はあるんだな』 『お望み通り、ひどく奪ってやろう』 あの夜あなたが奪ったのは わたしの「初めて」だけじゃなかったの―――? ☆★☆★Special Thanks☆★☆★   arancia様 さとみっち様 レビューありがとうございます! ▽▲▽▲▽▲ ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、 実在のものとは関係ありません。 2021/12/20 Start → 2021/12/23 Finished

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop