白雪姫は寵愛されている【完】

無表情の後で、ニコッと笑う朔也くん。


「そっか。そこまで言うなら信じるよ」


そう言って私を抱き寄せる。


「白雪は嘘、つかないもんね?」

「う、うん…」


───ピピピ、

文化祭の時に聞いた音だった。
またあの時と同じように腕時計を確認する。


ため息をつく朔也くんが私の頭を撫でて、玄関の方に向かった。その後を着いていく。


「ど、どこ行くの?」


こんな時間に…。
もう外も真っ暗なのに。

朔也くんに手招きされゆっくりと近付いた。髪に触れ、キスをされる。


「俺は白雪の事が大切なんだ。だから心配なんだ」

「……朔也くん」

「約束してくれる?何があっても、必ず俺を選ぶって」


ふと宏くん言葉を思い出した。
"すぐにその選択をすることになるよ。"

選ぶ…もしその時が来たとしたら私は…。

頭の中で浮かんだのはあの人。
私の名前を呼んでくれる大事な人。


「白雪」


「ッ…!?」


突然激痛が走った。
髪を引っ張られたのだ。


「俺を選ぶのは決定事項だよ。分かる?」

「痛っ……、朔也く、痛いよ…」


髪が抜ける音がする。こんなに強く引かれたことなんてない。しかも髪の毛を。


「返事は?」


涙目で頷くと、笑顔で手を離してくれた。朔也くんの手には抜け落ちた髪がある。


「俺のテリトリーで悪さをする奴がいるみたいなんだ。だからお話してこないといけないんだ」


頭を撫でる手に恐怖を感じる。


「すぐ戻ってくるよ。先に寝てて」


と言うと、おでこにキスし出て行った。
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