白雪姫は寵愛されている【完】
「「ただいま」」
誰もいない、静かな部屋に響くのは私と朔也くんの声だけ。
帰ってくる事がない「おかえり」はもう慣れた。
「白雪、手を洗ってお袋と親父に挨拶しておいで」
「ありがとう。先に行ってくるね」
手を荒い、座敷の部屋に行く。
襖を開けた先には仏壇だけの和室。
そこには遺影が二つ、お父さんとお母さん。
両親は私が6歳の時に交通事故でなくなったらしい。
私はあまり覚えてはいないけれど…。
二年前まではお母さんの姉、叔母さんと叔父さんの家で暮らしていた。けど、朔也くんが就職するのを機に二人で家を出る事になった。
叔父さんと叔母さんに挨拶もしないまま、会えなくなってしまった。一度だけ家に行ったけれど、既に引っ越しをした後で、今では連絡もつかなくなった。
何故だろう、と考えた事もあった。だけど、叔母さんは両親が私達の為にと残してくれたお金を手を付けず、取っておいてくれていた、と朔也くんに教えられた。
だからきっと…”私達のことなんて忘れて、二人で幸せに生きなさい”そう言う意味だと、朔也くんが言ってくれた。
…そのお金があるって事が分かっていれば、朔也くんは大学に行けたはず。それなのに、朔也くんは私の為に就職する道を選んだ。
何回も謝る私に向かい、朔也くんは笑って「白雪がいるなら、俺は幸せだよ」と言ってくれた。
「白雪、ご飯の準備しようか」
優しくて、格好いい自慢の兄。
「うん…そうだね」
私の誇り。