白雪姫は寵愛されている【完】
お風呂に浸かる。顔を半分お湯に入れ、ブクブクと泡を出す。考えているのは、今日のこと。
睨んだ、目が凄く怖かった。
私を軽蔑する目が凄く怖かった。
そんなにも私は久我さん…久我先輩にとって憎むべき相手と似てるのかな?
…そう、ですよね。あれほど私を嫌っていたんですから。
コンコン、外から叩く音がした。
「白雪?大丈夫?二時間は入ってるけど…」
「あっ!だ!…大丈夫!今上がります!」
心配した朔也くんがドア越しに言った。
「大丈夫ならいいんだ。慌てなくてもいいから、ゆっくりおいで」
「ご、ごめんなさい」
それだけ言って、脱衣所から出て行った。
…考えるのは後にしないと。流石に二時間は入りすぎ、ですよね?
ふぅ、と小さな溜め息と一緒に湯船から出た。
火照る身体のまま出ると、いつものようにココアを持つ朔也くんがソファに座っていた。
…今日はニュースを見てる。
問題は解決したのかな?
手招きをしている朔也くんに足早に近付き隣に座った。暖かいココアを笑顔で貰う。
「白雪、なにかあった?」
優しい声。
…どうして分かるのかな。
朔也くんは私のことなら何でもわかってしまうのかも。きっと私よりも。
悩みなら聞くよ、と言う朔也くんに。
私は思わず言葉に詰まりながらも口に出した。
「最初から…嫌われている人と、仲良くするにはどうしたら、良いと思う…?」
そう言うと、朔也くんは首を傾げた。
「新しい、友達でも作ろうとしてるのかな?」
「う、うん」
「…それって、女の子?」
「うん…そう、だよ」
本当は違うけれど…。ごめんなさい、久我さん。今だけは女性とさせてください…。