白雪姫は寵愛されている【完】
ど、どうしたら…いいの?もしかして…溜まり場まで行くのが、罰ゲーム…?…怖い人達に囲まれながら笑われるの?
先輩は黙ったまま窓の外を見ていた。私も一度外を見た。
ドクン、と心臓が跳ねる。
…速度が落ちた時なら…出られる、かな?
あの返却日を間違えた本の主人公は、女性の冒険家だった。自分の探求心で突っ走る彼女はとても勇敢で、飛行機からのダイブも大海原への飛び込みも、車内からの飛び出しも難なくこなしていた。
っ、もし…もし、私を笑う為に連れて行くなら……ここで、怪我してでも………、大丈夫…大怪我にはならないはず…。
だって笑われて、変な事言われて、指差される方が痛いもの。
見えないように、ドアに手を掛ける。
──────速度が落ちた。
っ…いま、なら。
「おい、」
同時に、背中に覆いかぶさる先輩がいた。
ドアが開かないように鍵をかけられる。
「何してんだ。死ぬ気か?」
どうしたらいいのか、どうしてここに居るのか、全く分からない。
車内、逃げ道はここだけ。鍵を掛けられたら…もう、逃げられない。
ほんの少しの勇気は、恐怖で私の動きを止めた。
開けるはずだったドアは指先が触れただけ。開ける事は出来なかった。
怖くて携帯を触る勇気もない。助けも呼べない。
「聞きたいことが──────、」
「うっ…うぅ…うわあぁん…!!」
手に触れた先輩の指に驚いて、思わず泣きだした。