正直者が愛を見る

30センチ

 ◆



 「(れん)く~ん!」


 卒業式まで残すところ1ヶ月。職員室の前でピョンピョンと飛び跳ね、皆より少しばかり背の高い彼氏の名前を呼ぶ。


 しかし、廊下で後輩くんと話していた彼氏こと(れん)くんは、私の姿を目に映すと「げっ」と鬱陶しそうに顰めっ面を浮かべた。


 明るい髪をワックスで固め、オシャレに制服を着崩している蓮くん。身長は180センチ。顔は小動物系。笑うと可愛くて一部の女子からモテている。


 中身は心配性でしっかり者。そこら辺、いがぐり頭だった小学生の頃から全く変わってない。私への態度が鬼なのも。


 「蓮くんっ」

 「煩いな。大声で名前を呼ぶな」

 「ごめーん」

 「向こう行けよ。邪魔」


 いったい彼女を何だと思っているのか……。蓮くんは駆け寄った私を“しっしっ”と冷たく手の甲で追い払ってきた。

 まるで思春期の息子と小煩い母親。余程、邪魔して欲しくないのか、眉間に皺を寄せて殺人鬼みたいな目で私を睨んでいる。


 間に立たされた後輩君も気まずそう。気の毒そうな顔を向けられて堪らず苦笑い。


 「もー……」


 仕方ない。ここは逆らわないが吉だ。そう思い、若干不満そうな声をあげつつも大人しくその場から離れる。去っていく私を見たって蓮君は知らん顔。いつものことながらクール過ぎてちょっと悲しい。


 だけど、やっぱりカッコいい。写真を撮ってキャーキャー騒ぎたい。もはや恋とか飛び越えてファンの領域。いがぐり頭だった頃からずっと好き。


 恋人になって5年。身長差は30センチ。心の距離も30センチ。話すときは首も心も痛い。


 明日香(あすか)(18)。自称蓮くん親衛隊、会員No.001。今日も蓮くんに夢中です。


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