正直者が愛を見る
0センチ
🖤
「ごめーん。まだ寝てるみたい。適当に起こしてやって〜」
「はい、ありがとうございます」
卒業式から日は過ぎ、大学の入学式の日。太陽もまだ登り切っていない時間に蓮くんの家に行き、出迎えてくれたオバサンと軽く話しながら蓮くんの部屋のドアを開ける。
出掛けるにはまだ早い時間だけど、スーツ姿の蓮くんを見るのが楽しみすぎて待ちきれなかった。
だってやばい。絶対に似合うし、想像しただけでカッコイイ。願わくは一緒に写真を撮りたい。無理ならせめて隠し撮りで。
「蓮くん?」
逸る気持ちを抑えながら部屋に入って声を掛けるベッドに近付き中を覗くと当たり前だけど、蓮くんはまだ夢の中だった。
布団に包まれて普通に寝ている。無防備に。そんな彼氏の寝顔を見て無意識にスマホを取り出しているんだから本当に私はどうしようもない。
恋人を通りこして、ほぼファンの心理だ。しかもかなり熱狂的な。見逃したら勿体ないの精神。自分でも呆れる。
「寝てるー?」
それでも誘惑に勝てず、小声で声を掛けながらそっと蓮くんのベッドに足を乗せる。
そのまま寝ている蓮くんの顔にスマホを向けて、とにかく音を立てないように注意を払いながらカメラを開く。
何だかメチャクチャ悪いことをしている気分。付き合って5年目の彼氏の寝顔を撮ろうとしているだけなのに、この罪悪感はいったい何だろう……。イケないことをしているような。
でも、このチャンスを逃すのは惜しすぎる。とりあえず1枚だけでも絶対に確保したい。撮って毎日寝る前に家でこっそり1人で見る。
何ならプリントアウトして蓮くんお宝秘蔵写真コレクションの一軍に仲間入りさせたい。
あわよくばツーショットも撮ろう。最初の1枚が撮り終わったら直ぐに隣に寝転がって、ささっと撮って離れれば大丈夫。
きっと、まだ起きないはず……なんて頭の中で計算しまくってる私は結構痛い女だ。
自分で自分に軽く引きつつ、カシャッと音を立てて写真を撮る。その瞬間、スマホに蓮くんの寝顔が放り込まれた。やったー!撮れた。よし。次は2人で……。
「……明日香?」
「ひゃっ!」
と、思いつつ隣に寝転がったら蓮くんに声を掛けられた。 目が合い、焦ってスマホを顔面に落とす。
天罰だ…。鼻にクリティカルヒットした。メチャクチャ痛い。痣になるんじゃないかと思う。
しかもツーショットが撮れなかった。顔の痛みより、そっちの方がショック。