頭脳戦デスゲーム ~真実と嘘~

頭脳戦の結末

 一番ヤンチャでガキ大将タイプのマジュンだからこそできるのかもしれない。シルバー教官のふりをしていたモンスターを挑発した。
「モンスター先生が嘘をついていたら、おまえが失格になるのか?」
「それもありえますね」
「モンスター先生は嘘つきだな。シルバー教官のふりをしてここ俺たちを呼んだのだから」
「正解です。私はその答えを待っていました。あなたは賢いですね。あなたの頭脳力はここにいる皆を救った。発想の転換力は群を抜いていますね」

 転換能力の高いマジュンが提案する。
「では、俺たちを解放してくれるのか?」
「もちろん、マジュンを除いて解放しますよ、マジュンは素晴らしい頭脳を持って合格したのだから、我々の仲間となってもらいます」
「なにぃ? 聞いてないぞ。それに、そのことは施設長は知っているのか? そんな勝手は許されないはずだ」
 机を蹴り、立ち上がったマジュンは、恐怖よりも怒りを抑えきれないようだった。
「施設長は知りません。彼女はもうこの世にいませんから」

 教室内がざわついた。とりあえず、ここの施設はわけのわからない組織に乗っ取られたようだったので、おとなしく従っていても埒が明かないということに気づいた。失格はやはり死に直結するということも、ミラアの先程の悲鳴が物語っているようにも思えた。

「教官たちを殺したのか?」
 マジュンは語調を強めて質問した。
「見かけた人間は邪魔なので殺しました」

 巧みな話術でマジュンが聞き出している間に、機械開発が得意な頭脳派のメカニックが自身のメガネから自作の戦闘型ロボットの遠隔操作をこっそり始めていた。

 そして、武器を作り出す能力にたけた、おしゃれ女子のブッキーナがスカーフやブーツやイヤリングのように見せかけて身に着けていた武器を逃走用に使おうとこっそり作業をはじめていた。

 これは、戦いだ。正義感の強いテレパは、心の声でやり取りできる能力がある。声には出さないが、心の中で話し合いをするために秘められた能力を発揮した。まず、目の前のモンスターを倒すために、誰が何をするべきなのかテレパがテレパシーで指示する。

『ブッキーナの服や靴やアクセサリーに見せかけた武器であいつと闘う。僕のように武器のないものはブッキーナから武器を借りる。同時にメカニックがロボットをここまで呼び、巨大なロボットを操作してアイツを倒す。マジュンは魔法能力があるから、マジュンは魔法の力でモンスターを倒す、イチかバチかだ』

 テレパは、皆の意見をまとめて、指示を発した。これは、自らの命と将来を懸けた戦いなのだ。皆、必死な表情だった。かれらの脳力を生涯で一番使っている瞬間だったと思う。

 モンスターを倒すべく、まずはブッキーナはつけていたバンダナを握り締め、武器化できるように手に握り締めていた。イヤリングは武器のないテレパとマジュンに片方ずつ武器として渡せるように耳から外してもう片方の掌の中で握り締めた。

 張りつめた空気を突き破るように……一人の人間が教室に入ってきた。良く聞きなれた声だ。

「よくできました、みなさん合格です。これは卒業試験です。ここにいるみなさんは無事卒業できますね」

 拍手をしながら、生きている施設長が入ってきた。これは、卒業試験だったのか?
「毎年、卒業試験は様々な形で出されるとは聞いていたが、今年はこれだったのか?」

 マジュンがほっとしたのと同時に驚いた顔を見せた。
「今年は、優秀な生徒が多いから、演出をちょっと凝ってみたの。あらゆる事態にも備えることができる人材を世に送り出すのが、ここの施設の役目ですから」

 施設長はにこやかな笑顔で笑った。
「あなたたちは世の中をまだ知らないけれど、荒波の中で私たちは生きていかなければいけないのです。この施設の外は先程のモンスターのようなものが勢力を伸ばしてきているの。だから、これから優秀な頭脳で我々は敵に立ち向かいます。これは、国家機関への就職試験でもあるのよ。卒業したら、この国の脳力としてあなたたちには働いてもらいます」

「俺たちの脳力が必要ってことか?」
「施設では優秀な子供を毎年送り出しているけれど、今年は特別素晴らしいわ」
「ミラアはどうなったんだ?」
「ミラアは、少し驚いて声を出しただけよ。失格となったのだから、とりあえず彼女の脳だけ研究所に提供しようかしらね」
 施設長の思惑がわからなくなってきた。
「脳だけ提供って?」
 マジュンが突っかかる。
「優秀な脳を集める実験をしているのだけれど、あなたたちの優秀な脳を研究所に送るのよ。でも、特別措置として優秀な人間を二人だけ研究員として送るのよ。この中の誰かが2人生き残るデスゲームの始まりね」

 温厚そうに見える施設長の残酷な提案に全員が凍った。そして、施設長は人間の皮を被ったモンスターだということに気がついた。

 俺たちが倒すべきは、ラスボスであるここの施設長なのかもしれない。そう思っていると施設長が悲鳴を上げた。同時に真っ赤な血が飛び散る。なんと、想定外だが施設長が後部から突如ナイフで刺され、倒れたのだった。施設長の上半身から真っ赤な血液が流れている。ミラアが気配を消して近づいて、ボスである施設長を刺したらしい。ミラアは無事だったようだ。モンスターは、メカニックのロボットが制圧している。逃げるならば今しかない。とりあえず目立たない場所へ逃げる。

 さて、俺たちは卒業を待たずに、この国のシステムに刃向かうことが課題となったようだ。俺たちはまずこれからのことを話し合うために教室から逃げ出し作戦会議をはじめた。しかし、俺たちはここの施設から簡単には出ることができない。ここの施設は閉ざされた空間となっており、簡単に子供が出ることができない構造になっている。だから、外の世界を知らないし、俺たちは元々親も兄弟もいないのだ。頼ることができる知人はいない。まずはこの危険な施設から抜け出す作戦を立てないと。

しかし、外の世界もきっと危険に満ち溢れている。知らない世界にたちむかうという作業は温室育ちの彼らにとっては大きな試練となる。突如デスゲームの登場人物となった彼らは息をひそめて作戦を立て始めた。

 その頃、施設長は全員がいなくなったことを確認して演技を辞めた。刺されたふりをして倒れていただけだったらしい。立ち上がり、地のりをつけたまま遠隔カメラで監視をはじめた。ここからが本当の卒業試験なのだ。卒業試験の採点を始めていた。

「今年はどんな優秀なアイディアを出してくるのか楽しみだわ」
 施設長は鼻唄を歌いながら施設内に取り付けられた監視カメラをくまなくチェックする。

「ミラア、演技力が高いですね。あなたは常日頃の行いが良く、一番に卒業は確定しているので、この卒業プロジェクトの協力者になっていただきました。まさに生徒代表の鏡ですね、ありがとう」

 初老の女性である施設長は上機嫌な様子でミラアに遠隔マイクで、はなしかける。その姿は本当に楽しそうで、皆がおびえる姿を見ている施設長は生き生きしている。これが、彼女の生きがいであり真の姿なのかもしれない。

 施設長は微笑みながら少年少女のうろたえた様子をくまなく観察している。4人が仲間だと信じているミラアは監視役として見張っているのだ。つまりミラアは施設長側の人間だったのだ。やはり、ミラアはこの中で一番冷静で賢いのかもしれない。

「それにしても、ミラアを含め5人共愚かね。我々が作った《《人造人間》》だとも誰一人気づかないなんて本当に愚かだわ。そういったところも含めて人間らしさを再現できているので完成度は高いわ」

 ミラア含め5人は実験だとは知らずに、緊迫状況の中で監視され、施設長の掌の上で脳力を試されているに過ぎないことをまだ知らない。モンスターたちが作った脳力の高い人造人間の成果を試しているだけである。実際、彼らは18年も生きたわけでもなく、記憶すらも作られたものだということにもいまだ気づいていない。

普通の人間は自分の記憶が作られたなんて考えることはないだろうし、自分が人工的に作られた人間だとは思わない。そういった点も実に人間らしく作る技術は進歩している。喜怒哀楽の感情、仲間意識、助け合い、知恵の出しあい、そして恐怖を感じること……全てにおいて成功しているという実験結果は研究所としてはうれしい結果となっているのだろう。

 彼らは何もかもが嘘で作られているのだ、施設は研究所であり、人間ではなく人造人間であり、親は最初からいない。記憶も嘘の記憶が埋め込まれている。知らないうちに嘘、偽の情報で埋め尽くされていたのだ。真実はひとつもなかったのだから。

 この社会はモンスターと人間が契約を結んだ社会。人間を襲わないようにモンスターと契約を結び、人間の代わりに人造人間をモンスターに与える。より人間らしい人造人間を作り出す。人工知能の行く先が心を持った人造人間なのかもしれない。

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