元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。

4.また、会いたい。

「ラーメン美味しい!」
「碧、美味しいね!」
「そう言ってくれて、良かった!」

 碧は家では基本ゆっくり食べるけれど、好きなお菓子やおかずの時は食べるスピードがすごく早い。今、ラーメンの食べるスピードも早い。

――碧にとって、本当に美味しいんだね、良かった!

 昨日と同じように準備してくれた椅子に座って、三人で朝ご飯。朝からこうやって外で食べるのも、気持ちがリフレッシュして良い。しかも碧とお兄さんもいる。

「そういえば、今更なんですけど。『碧ちゃん』は、名前を呼ばれてるのを聞いたから分かったけど、お母さんの名前もお聞きして良いですか?」
「わ、私ですか?」
「そうです」

 まさか、もうすぐお別れなのに、このタイミングで聞かれるとは思わなかった。

「私の名前は、小日向美和です」
「美和さん」

 お兄さんから名前を呼ばれると、なんだか不思議な気持ちになった。

「お兄さんは、本名ですか?」
「はい、加賀谷大地です。あと、それと、美和さんの……いや、なんでもないです」

 途中で言うのをやめたお兄さん。
 続きが気になりすぎた。

「何か言いたいことが?」
「あ、いや……さっき、テントの中の声が丸聞こえでしたけど、すっぴんも、綺麗でした」

「……あっ!?」

 金属が擦れるような声を出しちゃった。
 なんか色々と恥ずかしい――。

「それと……」

 いつもは、爽やかで余裕があるお兄さん。でもなんだか、今はモジモジお兄さんになっている。

< 16 / 20 >

この作品をシェア

pagetop