桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
14


人がこんなに苦しんでいるというのに誰も彼もが自分の気持ちをスルーする。

子供や夫の為に家庭を……今ある幸せを壊してはいけないと言う。

じゃあ私は? 
私は子供や夫の今ある幸せの為に犠牲にならなきゃいけないの? 
どうして誰も私の幸せのことは考えてくれないの? 

桃はそう叫びたかった。


痛めつけられた自分が痛めつけてきた相手の幸せを優先しなきゃならないなんて、
どうしてこんな滑稽なことがまかり通るというのだろう。

母に離婚したいと考えている旨はあらかじめ伝えていた。
母はその時は黙って聞いているだけで意見は言わなかった。

それを私は受け入れ、肯定の意味に捉えていたのだがそうではなかったようだ。


私が憤懣やるかたない様子で帰る際、母が側に来て言った。


「桃、しようがないのよ。身体のほうもいろいろと悪いところが出てきてるし、
もう年だもの。

奈々子をあなたのいない間ずっとみるなんてこと今の私には無理なんだって。  
悪く思わないでね」


「……」


私は返事をしなかった。


無理なら無理でいいけど皆の前でのあの発言はどうなの? と言いたかった。


実娘の背中をもろ撃ちするような言動がどうしても許せない。
母親の"発言"が私をどこにも逃げ場のない弱い立場に更なる追い込みを
かけたのだ。


もう今更何も話すことはないし、この先もない。
胸の内でそう呟き、私は実家を後にした。
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