熱の城

 なのに、思い浮かぶ愚痴なんて、全然なくて……。


『よく頑張ったな、藤乃』


 思い浮かぶのは、キラキラとした、あの人の笑顔と言葉。

 胸の奥が焼けるように、熱い……。


「……」

「……芽依? どうした? 具合悪いのか?」


 心配そうに、わたしを見つめるヒロキの顔。


 わたしの、好きな、人…―――


 好きな、人?


「……っ」


 心に残る、違和感。ギュッと目を閉じて、何度も首を振る。もうダメだと思った。

 真っ直ぐに彼を見上げて、わたしは口を開く。


「……ヒロキごめん、今日具合悪いみたいだから、先に帰るね」

「えっ!?」


 言い終わるや否や、わたしは席を立ち上がりファミレスを後にした。

 頭の中がグチャグチャで、どうしようもなくて、ただ無性に鈴木さんの声が聴きたくなっていた……。



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