神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

side羽久

ーーーーー…あれ?

意識が戻るなり、身体の力が抜けて、思わず、ふらっと倒れそうになった。

それを、シルナが慌てて支えてくれた。

「二十音…!大丈夫?」

「え…。あれ…?」

シルナが珍しく、チョコレートそっちのけで血相を変えている。

他の教師仲間達も、じっとこちらを見つめていた。

…えっ…?

「な、何だ…?どうした?」

「二十音…いや、羽久?羽久なの?」

「えっ…。俺は羽久だけど…」

心配そうにこちらの顔を覗き込むシルナに、俺は戸惑いながら答えた。

すると、俺の心を読んだらしいナジュが。

「戻ってるみたいですよ。いつもの羽久さんに」

と言った。

「あ…そうなんだ、良かった…」

ホッと胸を撫で下ろすシルナ。

「人騒がせですね、まったく」

「何かあったんじゃないかって、心配したよ。大丈夫?」

イレースと天音も、それぞれそう言った。

…みんなの、この反応…。

「俺…もしかして、また『入れ替わって』たか…?」

「うん…。…ちょっとだけだけどね」

…やっぱり。

そういや、今さっき…一瞬だけど、記憶が途切れてる…。

その間に、どうやら「前の」俺が…二十音・グラスフィアが、表に現れていたようだ。

…いつの間に…。

「ごめん…。なんか、心配かけたみたいだな…」

「羽久は悪くないよ。…二十音も悪くないけど」

そうだよな。

「でも、どうしたの?何か気になることでも…?」

「…」

…それは。

「天使がどうとか言ってなかった?」

「あっちの方見てたけどさー。何かいるの?」

令月とすぐりが尋ねた。

すぐりは、窓の外を指差していた。

釣られて、俺はもう一度、窓の外を見つめたが。

…何もないんだけど。

俺…いや、「前の」俺は、一体何を見てたんだ?

正直、俺は…「前の」俺ほど感覚が聡くないから、自分が何を感じ取ったのか、はっきりと理解出来ない。

でも…何だろう。心の奥がざわつくような…。

…不思議な感じがした。

だけど、それを上手く言葉にするのは難しかった。

「…ごめん。…正直、俺にはよく分からない」

「…そっか」

こんな煮え切らない返事なのに、シルナは俺を責めなかった。

むしろ、俺を安心させるように微笑んでいた。

「大丈夫だよ。羽久のせいじゃないから」

「…」

…誠に不甲斐ない。

でも…だけど、「前の」俺が何を感じ取っていたとしても。

それは決して…悪いものじゃない、気がする。

気がするだけで、根拠はないのだが…。
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